2011年10月20日

TPP:交渉、農業以外も議論錯綜 自由診療拡大?食品安全基準が緩和?


◇政府、慎重論抑制に躍起

■ 医療

TPPは規制の緩和や標準化を求めるため、規制で保護されてきた業界の警戒感は強い。日本医師会は「医療の営利重視が強まり、国民皆保険制度が形骸化する」と訴える。

TPPを主導する米国はこれまで、日本に対し、保険診療と保険外診療(自由診療)を併用する「混合診療」の全面解禁や、病院の株式会社参入を求めてきた。医師会は「混合診療が全面解禁されれば、価格を自由に決められる自由診療が拡大して、健康保険の対象が縮小し、医療格差が生じる」と主張する。

ただ、混合診療で健康保険が認めていない最先端の新薬や治療法を受けやすくなる利点もある。情報不足が不安感を強めている面もあり、政府は「現時点で医療は交渉対象ではないが、安心・安全な医療は守る」(経済産業省幹部)と慎重論を抑えるのに躍起だ。

■ 食の安全

交渉では、食品の安全基準も議論されており、農産物の貿易自由化拡大によって、消費者団体などから「安いが、安全ではない食品の輸入が増える」との不安が出ている。米国が日本の残留農薬基準見直しを要請したり、政府がBSE(牛海綿状脳症)発生による米国産牛肉輸入制限の緩和を検討するなど、外圧による食品安全基準の緩和を連想させる動きが続いたためだ。

経産省幹部は「議論の中心は検疫手続きの迅速化や透明性向上。遺伝子組み換え食品の表示ルールなどで日本より緩い基準が提起される可能性はあるが、安全確保のため慎重に判断する」と説明する。

■ 公共事業

政府や自治体が物品を調達したり、公共事業を発注するルールを規定する「政府調達」の分野では、公共事業への外国企業参入のハードルを低くする議論が進みそうだ。発注関係の公文書の英語表記や、発注案件の公示期間の長期化などが求められれば、小規模な自治体の事務負担やコストが増えかねない。

交渉参加国の米国や豪州などは、地方政府の公共事業で外国企業参入の手続きを整える基準額を日本の3分の1の水準とするFTA(自由貿易協定)を結んでいる。TPPでこうした基準が採用され、日本が参加すれば、海外勢参入が拡大し、値下げ競争が激化して、地方の中小建設業者が打撃を受けかねない。

経産省幹部は「日本の政府調達は一般競争入札が増えるなどオープンで影響は少ない」と説明。むしろ大手ゼネコンの海外進出を促すと期待感を示すが、地方選出の与党議員らの懸念は強い。

■ 金融

金融分野では、日本郵政の簡易保険などの扱いが注目される。米国はこれまで、簡易保険や郵便貯金について、「(日本郵政の全株を政府が保有するため)暗黙の政府保証があり、外資系との競争条件が対等でない」と批判してきたためだ。

政府が策定した郵政改革法案は、自公政権の郵政民営化を見直し、日本郵政への出資を維持する内容。交渉次第では、郵政改革法案に影響するため、早期成立を求める国民新党は反発している。

■ 労働

労働規制を巡る交渉では、交渉参加国に人件費が安いアジア諸国が多いため、「安価な労働力の流入で雇用が奪われる」との懸念がある。ただ、政府によると、「交渉で単純労働者は議論の対象外」で、主に商用で海外に行く際の入国手続き簡素化などを議論している。日本のビジネスマンが海外で働きやすくなる可能性もある。

また、輸出競争力を高めるために労働条件を不当に引き下げて安い製品を生産することは認めない流れとなっており、「日本製品の国際競争力改善にもつながる」(政府関係者)。

一方、「医師や弁護士など専門資格の相互認証が進めば、専門家が国内に流入して競争環境が激化する」との懸念もあるが、政府は「現状は議論されていないし、仮に要求されても日本が主体的に判断する」と強調する。


posted by 松田英貴 at 22:40| Comment(0) | TrackBack(0) | TPP
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